では早速、製図に取り掛かりましょう!

「っと、そのまえに!」


製図といっても紙に描くわけではなく、ベニア板に直接書いていきますので、製図の前に長いベニア板を、用意しなくてはなりません。

カヤックの全長ほどの長い合板はまず手に入りませんし、仮に手に入っても相当な輸送費がかかりますので、通常のベニア板を購入して継いでいきます。

ベニア板の種類も「カヤック工房」の案内では耐水性の高いマリングレードのモノを使うべし!となっておりますが、国内での入手は困難なため、T1ラワン合板4.0mm、920x1830mmと1230x2440mmを購入しました。

これらをsevernの全長14ft 6inch (約4.4m)以上になるよう継ないでいくのですが、どうするか?

スカーフ接続と言う工法を使用します。これは合板の木口を斜めにカットして貼り合わせる工法で、重ね合わせの部分を厚みの8倍 (4mm x 8 = 32mm) とする事で十分な強度が出せるそうです。

スカーフ専用ジグの製作

通常は、カンナを使って斜めにカットしていくのですが、たまたまギター製作時に購入したトリマーと言う電動工具を持っていたので、何とか楽に、かつ正確にカットできないものかと思案し、スカーフ専用ジグをなるものを作ってみました。

材料  

  •  1.5mmベニア合板 1800mm x 910mm 1枚
  •   脚付きのボルト約10mm x 100mm、ボルト用ナット、ワッシャー、蝶ナット x  4セット
  •  厚L字アルミアングル 厚さ約2mm x 1m   x 3本
  •  蝶番 x 2ヶ

スカーフカット用ジグの材料

合板は頑丈そうな塗装済みの物を使用しました。
この合板を約300mm x 900mm の長さで切断しコの字型の窓を開け、合板同士を蝶番にて繋ぎます。
合板の適当な所に穴を開けて、ボルトを差し込みます。

下写真参照
スカーフ用ジグの製作過程

スカーフ用ジグの製作過程


使い方

カットするベニアを窓の部分から真っ直ぐに置いてクランプで下側の合板に固定します。
次に、ボルトを取り付けた押さえ用の合板を上から被せます。この時、前述したカットするベニアの厚みの8倍 (4mm x 8 = 32mm)  となるよう外側二本のボルトの長さを調整します。(内側二本はトリマーを強く押さえた時に上に被せた合板がたわまないようにする為だけの気休めなので無くても良かったかもしれません)

ボルトの調整は、厳密にやろうとすると、
カットするベニアの高さ4mm斜辺32mmなので蝶番の角度は約7.18度になります。蝶番からボルトまでの長さが200mmであったとすると、ボルトの高さは約25mmになりますが、ここは左右の高さがズレないようにだけ気を付けて、高さはアバウトでいいと思います。実際には現物をカットして微調整します。

また、当初の予定では、アルミアングル二本をクランプにて押さえの合板に固定し、その間をトリマーでスライドさせてカットする予定でしたが、実際にやってみた所アルミアングルがたわんでしまい、カット面が波打ってしまいました。また、厚めのアングルに交換することも考えましたが、カットするベニアの最下面にトリマーのビットを届かせようとすると、ビットをチャックから長く突出させなくてはならず少々危険なので別の手を考えました。

色々試しましたが最終的に、アルミアングル二本をトリマーのベース部に貼り付けて、押さえの合板にはアングル一本のみをクランプにて固定し、それをガイドにトリマーをスライドさせてカットしていく事にしました。

言葉での説明は中々難しいので下記の動画をご参照下さいませ。




色々と試行錯誤しましたが結果的には、上々の出来でした。

スカーフカットされたベニア板


しかしながら、よくよく考えてみると、ここまで手間がかかるのであれば、

普通にカンナを使って作業しても良いでしょう。(^^;


まぁー 少しでも、やってみようと思われる方にとって、お役に立てれば幸いです。

 
最後に、
電動工具は便利な反面、使い方によっては大変危険な道具です!

今回トリマーを使用して2度ほど肝を冷やしました。1度目は、あまり周りを片付けずに作業してた所、置いてあった釘にトリマーのビットが当たり、超高速で釘が飛んでいきました。たまたま、周囲に人がいなかったから良かったものの、もしそこに我が子が居たら……  2度目はトリマーの刃先の動きに集中しすぎ、トリマーを押さえてた指が刃先からわずか2センチくらいの所まで近づいていました。トリマーのビットは1分間約2万から3万回転という超高速で回ってます。指が当たれば、切断と言うより一瞬にして霧になるでしょう。またトリマーの特性として、基本右利きであれば材料を左側に置いて押してカットしていきます。これを逆にしてしまうと、道具と材料が吹っ飛んでいきます。いわゆるキックバックです。  電動工具の扱いは、無理をせず細心の注意を持って取り扱って下さい。


スカーフ接続

こうして出来上がったベニア板をエポキシ樹脂を使って接着していきます。

ここでも「新版カヤック工房」では、日本では入手困難なエポキシや、エポキシに混ぜるマイクロバルーンなるものが紹介されてます。

その代用として私が使用したのが
コニシボンドE206です。コニシボンドE206

当時はアマゾン、楽天、ヤフーショッピング、モノタロウなどの価格を調べましたが、なんと伏兵「ものいち」の価格が一番安かったです。(確か5,500円位でした。現在調べると、どこも概ね7,500円程度の様です。)

エポキシに、混ぜて粘度を調整するマイクロバルーンはいくら調べても分からなかったので、おが屑で代用する事としました。

幸いおが屑は、今までの木工作業で捨てるほどあります。ところが、試してみたところ、おが屑が、荒くとても使い物になりませんでした。

そこで通販で、なるべく目の細かいおが屑を購入し、たまたま自宅にあったナショナル「お茶挽き器」なるもので更に目を細かくして使用しました。 (しかし、通販でおが屑が買えるなんてすごい時代になったもんだ)

お茶挽き機で挽いたおが屑


実際のスカーフ接続の方法は、書籍「シーカヤック自作バイブル」の百均の300円ガンタッカーを使った方法が簡単かつキレイに出来るのでおススメです。

その際、ベニア合板同士を真っ直ぐにつなぐ事が重要です。何故ならば、板をつないだ長辺が製図の際の基準のラインになるからです。

スカーフ接合されたベニア板
 
スカーフ接続されたベニア板
 
という訳でベニア板をつないだところで、やっとこさ製図に取り掛かります。

製図

まずは、横長の合板に対し インチおきに等間隔で垂直の線を引きます。

この線に対し、合板の下端から設計図通りのインチで点印をつけます。

次に、バテン (長い竹ひごのようなもので代用 ) を使ってその印をつなげて線を描きます。コツとしては、合板に付けた点印に細い釘を打ち、バテンを引っ掛けて固定していくと良いと思います。ここでの精度が後の組み立て時に大いに影響してくるのでなるべく自然なラインが出るよう慎重に行います。

カヤック製作で使用するバテン


製図が出来たところで、いよいよベニア板をカットしていきます。

ここで、右舷左舷と二枚製図する必要はありません。

と言うか、むしろ 二枚製図してはいけません。何故ならば間違いなく左右のサイズを寸分の狂いもなく製図することは困難だからです。

一枚のみ製図し、二枚を重ねて
切り口が垂直になるよう慎重にカットすれば、左右の狂いの少ない船体板が出来上がります。

せっかくインチやミリにこだわって作ってきたのに、斜めにカットすると直ぐ数ミリの誤差が出てしまいます。
もう一つ、製図したラインぎりぎりをカットせず、0.5〜1.0mm外側に余裕を持ってカットして、誤差はカンナで修正します。

ところが、私はトリマーを持っていたので、一枚目をカンナを使ってなるべく正確に作って、その一枚をテンプレートにして二枚目を製作しました。

カヤックのテンプレート


繰り返しになりますが、ここでの精度が後の組み立てに影響します。特にSvernは、船体板が2枚しかないのでここの精度が出ないと組み立てては分解を何度も繰り返す羽目になります。(はい、そうです私の事で御座います(^^;

次回、ハルの組み立て〜その1〜 に続く、